2009年5月14日木曜日
〔復刻版〕童話の教訓① ずるいキツネ
〔復刻版〕童話の教訓① ずるいキツネ
2匹のネコが、ごちそうのとりあいをしていました。通りかかったキツネが声をかけます。
「けんかをしないように、ぼくが半分に分けてあげるよ」
キツネは、ごちそうをふたつに分けました。でも、片方だけ少し大きかったので、キツネはちぎって食べました。すると今度は、もうひとつのほうが大きくなってしまいました。キツネは、大きくなったほうをちぎって食べます。また、もう一方のほうが大きくなってしまいました。それをキツネは、ちぎって食べます。こうしてキツネは、ふたつのごちそうをかわりばんこに食べて、最後にはぜんぶ食べてしまったのです。
これは、イソップ物語の「ずるいキツネ」です。
http://www.portals.co.jp/isopp/zuruikitune/index.html
このお話は、「無益な争いは、第三者の私服を肥やすだけ」という教訓をあたえてくれています。誰でも、子どものころに聞いたおぼえがあるはずです。そこから教訓を学んでいれば、ずるいキツネにつままれることにはならなかったと思います。
豊かな島に流れる千の川の近くに、おてんとさまから名前をもらった小さな小さな会社があります。この会社は、とても欲ばりな、おじいさんとおばあさんが経営していました。
おじいさんは、とくいのホラを吹いて、呼びよせたヒツジたちにうそのおはなしをきかせ、空っぽのエサのバケツを中身(なかみ)がいっぱいつまったようにみせかけました。うそのおはなしをきいたヒツジたちは、たくさんのエサが食べられることをゆめみて、自分たちのたくわえをおじいさんに「とうし」という名目(めいもく)であずけます。
おじいさんとおばあさんは、みるみるうちにお金持ちになっていきました。それはそれは、とてもたくさんのお金です。ヒツジたちが、たくわえをあずけたかわりにわたされたのは、おじいさんとおばあさんの名前が書かれた紙だけでした。
おじいさんとおばあさんは、ヒツジたちのみつぎもののおかげで、大きなおうちや自動車をいくつも買い、とてもとても裕福(ゆうふく)なくらしをしていました。
ところが、何年かたつと、おじいさんとおばあさんのうそに気がつくヒツジもでてきました。おじいさんが見せていたエサのバケツが空っぽだったことを知り、「わたしがあずけたたくわえを返してください」といいだしたヒツジもいます。はじめのころ、おじいさんとおばあさんはすこしずつ、たくわえを返しました。でも、お金がすくなくなることが、もったいなくてなりません。そこで、おじいさんとおばあさんは、お金をはらえばなんでもやってくれるキツネに、ヒツジとの話し合いをたのみました。
そのキツネは、おじいさんが警察に捕まりそうになったとき、いけないやり方で、たすけてあげたこともありました。
ヒツジたちは、おじいさんとおばあさんが大好きでした。でも、あずけたたくわえを返してもらわないと、おじいさんとおばあさんの名前の書いた紙だけでは食べていけません。ヒツジたちは、ただ自分のたくわえを返してほしいだけでした。けんかは、したくありません。
ところが、ずるがしこいキツネは、おじいさん夫婦とヒツジをけんかさせるようにしむけたのです。キツネは2匹の子分をしたがえて、「たくわえを返してください」といいだしたヒツジをどなりつけて、おどかしました。いじわるもします。なにも悪いことをしていない人に、あやまらせようとしたり、罰金(ばっきん)をはらえといったこともあります。まるで、おうぼうな王様のようにふるまったのです。
そのうちキツネは、おじいさんとおばあさんをあおって、ヒツジたちの味方(みかた)をしていた村人をうったえさせました。その村人は、おじいさんとおばあさんがブラックジャーナリストと呼んでいた人です。キツネは、おじいさんとおばあさんのためにやっているようにみせかけました。でもほんとうは、おじいさんとおばあさんから、お礼のお金をたくさんもらうためです。それにキツネは、自分が悪さをしたことをみんなに知らせたブラックジャーナリストと呼ばれる村人に、うらみをはらすことにも、おじいさんとおばあさんをりようしました。
キツネからけんかをしかけられ、いじめられたヒツジたちは、おこりだしました。おじいさんとおばあさんに、だまされたといって裁判をおこしたり、警察にうったえるヒツジがでてきたのです。顔をまっ赤にしてキツネがどなるごとに、ヒツジはおこり、さわぎはどんどんおおきくなるばかりでした。そして、キツネがさわぎをおおきくしたことで、とうとう新聞やテレビのニュースになってしまったのです。
おじいさんとおばあさんは、豊かな島から逃げて、遠い南の島にかくれました。
ずるいキツネのたくらみにのせられて、ヒツジとけんかさせられたおじいさんとおばあさんは、そんばかりしました。さわぎが大きくなったことで警察からもにらまれて、お金も集められなくなりました。よその国にかくしてあったお金も、どんどんすくなくなっていきます。おじいさんはラジオの番組もなくなり、本もつくれなくなりました。いつかはテレビに出て、有名になりたいという夢も消えました。
キツネは、さわぎを大きくするだけ大きくして、自分のつごうのために、ヒツジにお金をかえすやくそくをします。けっきょくはお金はかえさなければならないのに、おじいさんとおばあさんは、ヒツジからうらまれてしまい、そのうえキツネには高いお礼のお金をはらわなければなりませんでした。
ブラックジャーナリストと呼ばれる村人との裁判にも、キツネは負けました。
おじいさん夫婦とヒツジたちをけんかさせて、とくをしたのはキツネだけでした。さわぎをおおきくすればするほど、お礼のお金をたくさんもらえます。キツネは、みるみるうちにお金持ちになり、そのお金のおかげで、べつの事件でテレビに出演し、正義の味方として有名になったのでした。
おじいさんとおばあさんは、キツネにつままれて被害を大きくしてしまいました。
ヘタな人生論より「イソップ物語」ですよ。