2009年5月23日土曜日

〔復刻版〕童話の教訓③ ヘルメスの軍とおてんとさまの国の人


〔復刻版〕童話の教訓③ ヘルメスの軍とおてんとさまの国の人


ヘルメスという神さまが、1台の車にウソやペテンやサギをまんさいして世界じゅうをまわり、各国に少しずつくばっていました。

おてんとさま国に、さしかかったときのことです。ヘルメスの車がこわれてしまいました。

すると、おてんとさま国の人たちは、積み荷が高価な品物であるとおもいこんで、残らずぬすんでしまったのです。

それから、おてんとさま国の人は、ペテンの国となりました。その国民は、どこの国の民よりもウソツキでペテン師。彼らの舌は、真実をかたることがない。といわれるようになりましたとさ。

おしまい


このお話は、イソップ物語の「ヘルメスの軍とアラブ人」というお話を下敷きにしています。原題のとおり、原話ではヘルメスからウソやペテン、サギを盗んだのはアラブ人とされています。ギリシャ時代の差別的な偏見で、原話に学ぶべきところはないように思います。でも、「類(るい)は友を呼ぶ」や「朱(しゅ)にまじわれば赤くなる」、「郷(ごう)に入れば郷にしたがえ」などのことわざもあります。夫がウソツキなら、その妻もウソツキ。王さまがペテン師なら、その家来もペテン師になることは、おおいにありうる、というのが今回のお話の教訓といたしましょう。

ペテン師の王さまにつかえる家来や使いの者が、「もうすぐお金をかえします」とか「誠意ある回答をします」などと言っても、けっして信じてはいけません。


イソップ物語には「ペテン師」というお話もあります。これは、原話のままご紹介します。


ペテン師がある人にいいました。

「アポロン神のおつげなんて、うそだよ。ぼくがその証拠(しょうこ)をみせてやる」

その約束の日がきました。ペテン師は、1羽のスズメをつかまえると、マントの下にかくし、アポロン神のいる神殿(しんでん)へいきました。

神さまの像の前に立って、ペテン師はいいました。

「わたしが、いまこの手ににぎっているものは、生きものですか? それとも命のないものですか?」

もし神さまが「命のないものだ」と答えたら、生きているスズメを見せればいいし、もし神さまが「生きものだ」と答えたら、スズメを手でしめ殺してから、出してみせようと思っていたのです。

しかし神さまは、このペテン師のわるだくみが、よくわかっていました。

「やめろ、ふとどきもの! おまえの手の中にあるものは、おまえが勝手に生かしたり殺したりできるものではないか」

おしまい


このお話しは、神さまをだますことは決してできないということをおしえています。「あとだし」は、ギリシャ神話の時代から、ペテン師がつかう手口(てぐち)として知られていたわけです。そんな子供だましの手口は、神さまでなくても見ぬけると思うのですが…。